山ギョーザ

無性にギョーザを食べたくなる時がある。

とある休日、僕はその気持ちに襲われ、いてもたってもいられなくなった。

ちなみに僕は栃木県の宇都宮市出身。そう、ギョーザの街である。消費量No.1になることも多いのだが、実はコレ、世帯当たりの購入額なので、外食は含まれずスーパーなどで買ったものが対象。だから僕も幼い頃から家でギョーザを食べることが多かった。「今日の晩ごはんはギョーザ!」なんてことはよくあった。

そんな背景も手伝ったのかはわからないが、その日は自分で焼いてみようと思ったのだ。

いちから作るのは面倒なので、近所の日高屋で冷凍ギョーザ(30個で580円!)を購入し、向かったのは家ではなく奥多摩だった。

ルートは、「払沢(ほっさわ)ノ滝〜浅間嶺〜松生山(まつばえやま)〜笹平」。

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集落の家々を眺めながらの里山歩きは、なんだか昨年秋に訪れたヒマラヤとも似ていて、旅のつづきをしている気分になった。

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浅間嶺までは、のんびり歩いてもたかだか2時間半。山頂でいざ調理スタート。まずフライパンにカチンコチンの冷凍ギョーザを敷き詰め、火をつける。その無表情、無感情な佇まいは美味しさのカケラすらない。お湯を注ぐと、グウァジャーーーッという破裂音ととにも真っ白な湯気が立ちのぼる。すぐさまフタをかぶせる。徐々に音はやさしくなっていく。幼い頃から聞き慣れたこの音の変化が僕は好きだ。おふくろの味ならぬおふくろの音である。

こんがり焼き色がついたギョーザを、まずは半分だけかじってベールに包まれていた秘部をたしかめながら味わう。2個目は丸ごと口に入れて、ガッシャガッシャと暴力的に咀嚼しながら皮と具のマリアージュを楽しむ。3個目は噛むのもほどほどに、ギョーザはのどごし!とばかりにゴクリと飲み込む。まあ食べ方なんでどーでもいいのだが、僕は1時間ほどギョーザとの蜜月の時を過ごした。

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満たされた僕は重い腰を上げて、松生山経由で下山することに。この下山道は、昭文社の山と高原地図だと破線になっていることもあってか、人が皆無。

破線ルートとはいえ、登山道ははっきりしていて、道標もあり、迷う心配はない。ただ激坂下りなので、けっこうハードである。「マジかよっ!」と思うほどの急斜面もたびたびあって、なんともアドベンチャラスだった。

下山口の笹平に辿り着いたときには、もう安堵感でいっぱい。あれだけたらふくギョーザを食ったのに、その満腹感も満足感もすっかり消え失せ、空腹度100%。「中華屋さんでギョーザでも引っかけていくか!」と決意をあらたにして奥多摩を後にした。